機械学習(AI)を活用した農業用水の需要予測型水管理の可能性について

機械学習(AI)を活用した農業用水の需要予測型水管理の可能性に
ついて / 槻瀬誠(2020年9月掲載)

1 農業用水の水管理

農業用水の管理は主に供給主導型と需要主導型に分類される。供給主導型は予め定められた時間に、定められた量の農業用水を配水する管理形式であり、主に開水路を主体とした地域で行われている。需要主導型は農家の需要に応じて必要な量の農業用水を配水する管理形式であり、主にパイプラインを主体とした地域で行われている。

供給主導型は予め配水する農業用水の量を定めているため、農家の需要に対して機動的に対応することが困難な面が存在し、無効放流などが生じることもある。このことから、機械学習により、供給主導型の地域においても、農家の水需要を事前に予測する需要予測型水管理により、適切な水使いが可能か実験を行った。

2 実験の方法

本実験では実際に農業用水を利用している地区をモデル地区とし、このモデル地区における過去の水利用データを用いた。(モデル地区概要図)

機械学習を行うに当たり、ライブラリはTensorflow、手法はLSTMを採用した。説明変数は気象庁で観測された2009年から2015年までの日照量、最高気温、雨量とし、目的変数は当該機関のモデル地区内の各施設の取水データとした。

モデル地区概要図
モデル地区概要図
モデル地区概要図

3 結果

 実験の結果、モデル地区の各取水量の合計値(年間平均15m3/s)に対し平均で約0,29m3/sの誤差で予測することができた。また、時期によって取水量が変化する変化点についてもある程度予測することができた。ただし、台風等の影響により取水量が急激に変化した変化点については予測することができなかった。(予測値グラフ図)

予測値グラフ図
予測値グラフ図
予測値グラフ図

4 おわりに

本実験により機械学習により用水需要をある程度予測することが可能であると分かった。

今後は需要予測型水管理による水管理の省力化と無効放流等の削減の実現性や効果について実際の地区での検証が必要である。